FXにおける【認知バイアス】を制覇するシリーズの❷です。
認知バイアスというのは具体的には人間の本質的な心理状態から生じる、認識の歪みのことです。
認知バイアスを制御したからといって勝てるようになるわけではないですが、無駄な負けを減らす上ではとても重要なものです。
本記事は以下のような悩みをもった方に有効です。
・負けそうな時にいつも損切りできない。。
・時間と労力を考えてトレードしてしまう時がある。
・過ぎてしまったことで思い悩むことが多々ある。
自分を客観視することで見えてくるのが認知バイアス。その存在を知っておくだけでも効果はありますし、常に頭の片隅で意識しておくことで正常な判断をしやすくなります。
では颯爽と見ていきましょう!
認知バイアス❷【サンクコストバイアス】について
まず初めにサンクコストバイアスとは、わかりやすく表すと次の一言に集約されます。
サンクコスト=「もったいない」
きちんとした説明としては、すでに発生していて取り消すことができない事柄のコストに気を取られ、合理的な判断ができなくなる心理状態のこと。
つまり、「もったいない」ですよね。
別の呼び方では「埋没費用効果」「コンコルド効果」「サンクコスト効果」などといったりもします。
常に、今の現状に対して妥当な判断と行動が求められる投資の世界やビジネスの世界においても、知らず知らずのうちにサンクコストにかかっていることは本当に多いと思います。
過去は取り返せないし、巻き戻せない。
しかし、その過去の出来事に労力や時間を費やせば費やした人ほど、サンクコストを受ける影響は大きくなっていくのが特徴です。
次の見出しでその実例を見ていきましょう。
実は身近なサンクコスト
何気ない日常のもったいない連鎖
サンクコスト自体は日常生活でも知らず知らずのうちにものすごく発生しています。
この記事を読んでいる皆さんも「もったいない連鎖」を体験したことはないですか?
ここで止めるのは「もったいない」からもう少し続けたけど、結局もったいなかった。というようなこと。
例えば❶、猛勉強してやっとの思いで取得した難関資格。とったはいいけど結局使わなかったとか。でもでも使わないのは損だよなと思い、さらに猛勉強してもう一段上の資格をとってはみたものの、残るのは達成感だけで、やっぱり使う機会がない。
例えば❷、転職活動なんてその典型です。今まで勤めてきた会社や、培ってきたスキルがあるが為に、今すぐやめるのはなんかもったいないし、「もう少し様子見しよう」がズルズル続いて、結局「転職を考えていたらもう3年も経っていた」なんて状況。「もったいない」と感じた時に転職していれば、新たな分野で3年もキャリアを積めていたのに。
例えば❸、とある企業のプロジェクトや事業において、「多額の投資資金」と「多大な労力」と「莫大な時間」を新規事業に費やしてはみたものの、数年経っても赤字経過のままで不採算事業であったとき。できるだけ早く事業撤退するのが最善の一手となる状況に追い込まれても、今までに懸けてきたものが大きいが為になかなか撤退の決断ができない取締役や事業責任者がいたりと。そして結局はさらにマイナスを深掘りして、大赤字で泣く泣く事業撤退。
これらの例からお分かりの方は分かるとおり、サンクコストはサンクコストを呼び、呼ばれたサンクコストもさらなるサンクコストを呼びます。まるで強豪モンスターを呼びまくるだけのモブキャラのように。そして最後は結局、「最初のうちにやめておけばよかった」と大惨事になってから反省するのがいつものオチです。
最初に感じた「もったいない」こそが破滅の始まりなのです。
この最初をスルーするとどんどんサンクコストは大きく膨れ上がっていきます。
では一体、どのような対策を取るべきなのでしょうか?
サンクコストへの対策
❶事前のルール化
まずFXにおいて最も有効な対策として挙げられるのは、「事前のルール化」です。
サンクコストがどうこう、、という前にしっかりと自分の取引ルールや取引手法(特に損切り)を決めておくことで、迷うことはなくなります。
しかし、ルールをいくら決めていても悩むような局面が出てきた場合には再度「ルールの細分化」を徹底しましょう。AパターンとBパターンで考えていたなら、それぞれをもう一段階細分化して[A-1][A-2]パターン、[B-1][B-2][B-3]パターンというように。
❷ゼロベース思考
次に有効な対策としては「ゼロベース思考」が挙げられます。
言葉通り、今の状態を過去や未来関係なしに、いったん白紙に戻します。
そして、まっさらな状態で現状を俯瞰した時に、最適となる最善策をとる。
シンプルですがなかなかこれができないという人が多いのも事実です。
この考え方ができそうにない方は先程の「事前のルール化」を徹底してください。
❸オポチュニティコストとの比較
オポチュニティコストとは、日本語で「機会費用」のことです。
簡単にいうと、サンクコストと比較しているもう片方の行動をとった時に「得られたはずの」「得られるであろう」対価を先に計算して見積もったコストのことです。
古いものに囚われすぎて、新しいものの享受をないがしろにしていると、知らないうちに機会損失で利益を逃してしまっているのです。
例えば、Aさんはフリーターで月収25万で事務の仕事をしているとします。しかし、Aさんには大学時代に培ったプログラミングのスキルがかなりあり、大学時代の旧友や、先輩のコネを使って仕事を引き受けてエンジニアの仕事をしていたら、月収40万は下らない成果報酬を得ることができます。ここでAさんは優柔不断で迷っているうちに半年が経ったとすると、オポチュニティコストは「40×6=240万」になります。しかし、Aさんは事務を半年していて「25×6=150万」の報酬を得ているので、実際のオポチュニティコストとの差額は「240ー150=90万」の損失を被っている可能性があるのです。
このオポチュニティコストとの差額を計算することで、実際にサンクコストにかかることで生じる損害について数値化が可能となります。そのためサンクコストを脱却する行動を合理的にとりやすくなるのです。
まとめ
以上がサンクコストバイアスと、その実例、対策となります。
時間が巻き戻せないものである以上、過去の出来事をゼロにするのは誰しも「もったいない」と感じるのが普通です。
しかし、その「もったいない」が未来にとって「もったいない」可能性がある、事実があるということをわきまえておかなくてはなりません。
時に「ゼロ」になったとしても。
時間は巻き戻せなかったとしても。
今、この時点からは、常に何度でも、やり直すことはできます。
未来はいつだって白紙のままですから。
めんどくさがらずに、みんなが選ぶ「近道」ではなく、
そこらじゅう空いている「地道」を選んで
真っ直ぐ愚直に進んでいきましょう。
それが事実上の「近道=地下道」です。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
本記事が皆さんのFXライフの糧となれれば幸いです。