本記事では移動平均線について基礎からわかりやすく、まるっと解説していきます。以下のような人にお勧めです。
・移動平均線の使い方がいまいちわからない。
・設定の仕方で迷いたくない。
・移動平均線をもっと深く理解したい。
移動平均線はテクニカル分析の王様と言っていいほど誰もが知っているインジケーターです。
ですが案外使いこなせていない人が多いのも事実。なんとなくで設定していたり、曖昧な捉え方でスルーしてきている人も数多くいます。
(以下では移動平均線を「MA」で統一して略します。)
MAを表示しているけれどあってないような存在になっている人も、表示はしていても判断に使いこなせていない人も、もちろん全くゼロの初心者の人も。この際この記事一本で、まずは基礎からまるっとマスターしていきましょう!
移動平均線の【種類】
移動平均線には数種類ありますが今回はその中でも最もメジャーなものを2つ紹介します。
その2つとは、SMA(単純移動平均線)とEMA(指数移動平均線)です。
以下に特徴をまとめました。
SMAの特徴
・最も基本的なMA
・一定期間の売買価格の平均値を表している
・大きなトレンドがわかりやすい
・全般的に市場に遅れた動きとなる
・ダマシが少ない
・滑らかで平坦な動き
EMAの特徴
・直近の価格にウェートを置いたMA
・市場の変化をいち早く反映するMA
・ダマシが多い
・起伏のある神経質な動き
まず一般的にMAといわれているのはSMAのことです。
MAの設定期間に対し、それぞれのローソク足の終値を足して期間で割ったものがSMAなのでわかりやすいですよね。
ただSMAには弱点があって、一定の期間内を平等に計算する平均値のため、直近の値動きに遅れをとる場合が多々あります。
そこで直近の値動きにあったMAとして計算しなおしたのがEMAです。
いち早く市場の動きを察知してエントリーポイントを教えてくれます。
しかし、EMAにも弱点があって、市場の値動きに敏感になる反面、ダマシが多くなってしまいます。
双方の弱点を比べるとどちらがいいとは一概には言えないですが、私自身の見解としてはEMAの方が使いやすいと感じています。理由は以下の通りです。
・直近の値動きに反応するため、相場の山と谷がわかりやすい
・SMAにもダマシは存在するため
・含み益を伸ばすときに使いやすい
・SMAよりも機会損失が少ない
「いち早く相場の流れをキャッチする癖をつけておくことで、いち早く相場に慣れる」といったイメージで当初は使っていましたが、あながち間違いではないと思うのでお勧めです。
移動平均線の【期間】
MAの期間について。
こちらも調べてみると色々な期間があり、どれがどれで正しいのかわかりにくくなりがちです。
しかし、期間設定で大切なのは「数値」よりも「目線」です。
この目線というのは「短期・中期・長期」のこと。3本あると基本的な使い回しが全てできますが、場合によっては「短期・長期」や「短期・中期」の2本の組み合わせで取引を行うこともちらほらあります。
期間のベースとなるのはやはり「日足」です。
一週間の営業日は5日のため「5MA」だったり、一ヶ月の営業日が約20日なので「20MA」だったりが多いです。
以下に一般的な期間の目安を載せておきます。
短期MA・・・15~25
中期MA・・・50~75
長期MA・・・100~200
ちなみに私自身は短期を20MA、長期を200MAで判断しており、その短期〜長期の間を総合してGMMAという複合型のMAを使用しています。
移動平均線の【交差】
続いてはMAの交差について。以下2つがあげられます。
「ゴールデンクロス」
・価格がMAを下から上に抜けること。
・期間の短いMAが期間の長いMAを下から上に抜けること。
「デッドクロス」
・価格がMAを上から下に抜けること。
・期間の短いMAが期間の長いMAを上から下に抜けること。
売買シグナルとしては最も有名なものですね。
しかし、短絡的に買いシグナル・売りシグナルとだけ記憶しておくと、レンジ相場やトレンドレスな相場の時に「相場観」が掴みにくいです。
そのため以下のようなポイントを押さえておきましょう。双方まとめて「MAクロス」と略します。
・MAクロスは、売買の優劣が入れ替わる分岐点
・MAクロスはトレンドの入れ替わりのみに有効
・MAクロスはレンジ、もみ合いでは機能しない
・MAクロス時のPA(プライスアクション)が大切
移動平均線の【収束】
では移動平均線はレンジ相場では機能しないのか?
というと、そうでもありません。
レンジの際は主にMAの収束期間に着目すると優位なトレードが行えます。MAの収束期間とはMAがもみ合っていたり、MAに価格がまとわりついている局面のこと。
どう活かすかというのは、主にRR(リスクリワード)の高い取引を仕掛け続けるに尽きます。RRの高い取引とは「損切り幅より利確の幅の方が大きい取引」、例えば「損切り10pipsに対して利確が20pips」のような取引のことです。
そしてMAやボラティリティの収束局面はFXや投資全般で「最も儲かるポジション」を作る瞬間でもあるのです。上の画像を見ても収束した後に大きく伸びているのがわかると思います。
文字通り、トレンドの初動に乗ることができる反面、難易度はかなり高いです。そのためレンジやMAの収束期間はトレードを避けるという人も多く存在します。
資金管理やトレード全般に慣れていないと、損切り貧乏になったり、往復ビンタでメンタルダウンしてしまうので、少なくとも脱初心者になってから挑戦するのがお勧めです。
移動平均線の【法則】
移動平均線には有名な法則があります。
グランビルの法則です。
以下にその8つの法則をまとめました。
買いシグナル【❶~❹】
❶【新規買い】MAが下落後、横ばい、または上向きに転じたときに価格がMAを下から上に突き抜けた場合
❷【押し目買い】MAが上向きの時に、一旦価格は下落しMAを下回るも再度上昇しMAを下から上に突き抜けた場合
❸【買い乗せ】MAが上向きの時に、一旦価格はMAの手前まで下落するもMAを下抜けることなく再度価格が上昇する場合
❹【短期買い】価格がMAの下に大きく乖離した場合
売りシグナル【❺~❽】
❺【新規売り】MAが上昇後、横ばい、または下向きに転じたときに価格がMAを上から下に抜けた場合
❻【戻り売り】MAが下向きの時に、一旦価格が大きく下落し再度上昇しMAを上抜けした場合
❼【売り乗せ】MAが下向きの時に、一旦価格が上昇するもMAの手前で止まり再度下落した場合
❽【短期の売り】価格がMAの上に大きく乖離した場合
文面だけではいまいちイメージしづらい部分もあるかと思うので実際にチャートで確認してみましょう!
うまく使いこなすまでには訓練が必要ですが、MAに関する基本的な法則なので覚えておきましょう。
また、MA自体が価格が決定した後の遅行指標であることから、このような売買の法則に基づいてMAが追従して動いているとも言えますね。
奥が深いです。
移動平均線の【強さ】
「強さ」とはなんのことか?
これはシンプルに「トレンドの強さ」のことです。
忘れがちですが、移動平均線はそもそもなんのために作られたかというと、トレンドを見極めるためです。
そのトレンドの強さをMAで図る方法を紹介します。
まずパッと思い浮かぶのは「MAの角度」ですよね。
上向きの上昇トレンドでも、斜め30°より斜め45°の方が「強いトレンド」という感じがします。下降トレンドでも同様です。
しかし、角度を測っていたとしてもMA自体が「ローソク足の終値」で決まることから、価格が動いている最中もMAの角度というのは少しずつ変わってきてしまいます。
それでは曖昧で手間になってしまうため実践には向いていません。
そこで登場する完璧なトレンドシグナルというのが「パーフェクトオーダー」です。頭文字をとって「PO」と私自身は略しています。
ではPOとはいったいなんなのかというと、具体的には3本以上のMAが以下のような状態のことを指します。
上昇トレンド時、3本以上のMAが上から「短期→中期→長期」の順に並んでいる状態。
下降トレンド時、3本以上のMAが下から「短期→中期→長期」の順に並んでいる状態。
こちらも具体例をチャートで見てみましょう。
画像の赤マルが上昇トレンドのPO、青マルが下降トレンドのPOです。
綺麗に短期→中期→長期の順番で並んでいますよね。
このPOが形成されると、ただのトレンドではなく「強いトレンド」という判断ができます。
なぜなら短期目線の人も、中期目線の人も、長期目線の人もすべて同じ方向を向いているからです。
「POを制するものはFXを制す」
といっていいほど、POを使いこなせるようになると取引がすごく上達しやすいのでぜひ早いうちに習得してみてください!
移動平均線と【MTF分析】
最後の項目となりましたが、こちらは少し応用編です。
まず「MTF分析」というのはみなさんご存知の「マルチタイムフレーム分析」の略で、複数の時間軸を用いて相場をフラクタル状に分析していくことです。例えるならば、マトリョーシカのようなイメージの分析方法ですね。
(以下はMTF分析が習得されている前提でお話しします。)
MTF分析をしているとある人はこう思います。
「普段デイトレで使っている15分足チャートに1時間足のMAを表示できないのか、、?」
と。これがこの見出しのテーマである、MAと時間軸はまたげないのかというお話しです。
結論からいうと、しっかり可能です。
まずわかりやすいように具体例をあげて理解を深めていきましょう。
15分足でも1時間足でも「20MA」を設定しているものとし、今から1時間足の20MAを15分足チャートに表示する際の手順と考え方を追っていきます。
❶MAの計算式から考える
MAは平均線という名の通り、ローソク足の終値を何本か合わせて割った後の平均値で構成されています。
例えば20MAならば、直近20本のローソク足の平均値です。200MAなら200本の平均値。
❷時間の平均値に着目する
では今度はその平均値を「時間」という観点から考えてみましょう。
例えば20MAの中でも「15分足」の場合は「15分が20本分」なので「15 x 20=300分」の平均値となります。同様に「1時間足」ならば「1時間が20本分」で「20時間」の平均値。これを「分」に直すと「20 x 60=1200分」の平均値ですよね。
さて、ここで勘のいい方はお気づきかと思いますがその通りです。
「1時間足の20MA」は「1200分」の平均値。「15分足のMA」は「300分」の平均値。これが15分チャートで表示されるので逆算して「300÷15=20」となります。この20は元の20MAの20ですね。300分は15分足20本分なので。
この逆算を1時間足の20MAである「1200分」の平均値に対しても同様に行うと、
「1200÷15=80」つまり1200分は15分足が80本分の平均値となるので求めるMAは「80MA」となりますね。
そうです。15分足チャートに「1時間足の20MA」を表示したければ「1200分の平均値」→「80MA」を設定すればこれが15分チャートでの「1時間足の20MA」となるのです。まとめるとこんな感じの等価関係です。
「1時間足の20MA」=「20時間の平均値」=「1200分の平均値」=15分足の「80MA」
以上、例えで表現しましたが一般化すると以下の手順で上位足チャートのMAを下位足に表示できます。
- 上位足MAの時間平均を下位足チャートの単位(分/時間)に合わせる。【1時間足20MA→20 x 60=1200分の時間平均】
- 計算して合わせた時間平均を下位足のローソク足一本分の時間で割る。【1200÷15=80】
これで下位足で表示すべき上位足MAの数値が算出されたことになります。
慣れてみれば、案外簡単に出せますよね。
以上、MTF分析をする上での移動平均線の上位→下位への表示方法でした。
まとめ
移動平均線は使いこなせばこなすほど、使い方が極まるだけでなく「相場に対する感性」が磨かれていきます。
「このMAに対して価格がこう動いたから次はこういうパターンがあるな。」というように。
百聞は一見に如かずですし、FXでもインプットしたら実践の積み重ねが兎にも角にも大事です。
頭と指先しか使わないですが、目の前の現象を判断して行動に移すのは知識を寄せ集めるだけではどうにもならないことが本当に多いです。
実践しましょう。
デモからでいいです。
使い方を知って終わるのではなく、使って使いこなして前進です。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
本記事がみなさんのFXライフにおける恰好のスタートラインとなれれば幸いです。